2018/07/15 改訂版 「『あなたの悩み、分かるわ』詐欺に気を付けろ」「周りの人をカウンセラーにしない」「人生なんて相談しても仕方がないことが多い」

Cherish The Day / Sade シャーデー ~世界で一番好きなラブソング

Cherish The Day / Sade シャーデー ~世界で一番好きなラブソング

初めてこの曲を聴いた時、陶然として、しばらく動けなかった。
「魂に触れる」というのは、こういうことをいうのだろう。
身体の芯から痺れるような甘い衝撃のあと、今まで眠っていた何かが慄然と目を覚ました。
長い間、自分の内側でくすぶっていたものが、外側に向かって爆発的に流れ出すような、そんな心境だった。

シャーデー・アデュの歌う『Cherish The Day』。

これほどまでに崇高かつ官能的な愛の歌を、私は他に知らない。

愛、愛と、知ったように騒ぎ立てるものでもなければ、ノーテンキに幸せを歌うものでもない。
ただもう、魂の奥に、深く深く沈み込むような愛の真実が、非常にシンプルな旋律の中に歌われていて、その宇宙観に心底から共感せずにいられないのである。

たとえば、

I cherish the day
I won’t go astray
I won’t be afraid

You can show me how deep love can be……

毎日がいとおしいの
もう道に迷うこともない
恐れることもない

愛がいかに深いものかあなたに教えてもらったわ

タイトルでもある「Cherish The Day=毎日がいとおしい」は、まさに恋をした者の心境である。
本物の恋は、ただ、相手に恋をしているというだけで、魂が満たされるものだ。
「相手が自分のことをどう思っているか」とか、「どうしたらもっと愛されるか」などという不安や打算とはまったく関係がない。
ただ、あの人に恋をし、恋する悦びを知ったというだけで、この世に生まれたことも、今生きていることも、すべてが眩しく、『毎日がいとおしい』、そんな気持ちになるのである。

そして何より心ひかれたのが、このフレーズだ。

If you were mine,
If you were mine,
I wouldn’t want to go to heaven

もし あなたが私のものなら
私のものだとしたら
私は天国に行けなくてもかまわない

本当に人を愛したら、望むことはただ一つだ。
その人と、身も心も一つに結ばれること。
幸せとか、楽しさとか、そんなことは何の意味もない。
ただ、一つになりたい。
この世での名前も立場も、相手の皮膚さえも超えて、自分と相手の境目も分からなくなるほど、固く、一つに結ばれること、それだけだ。
『天国に行けなくてもかまわない』というのは、愛の強い希求の前では、この世での価値観など何の意味もなく、欲も、恐れも、何もかも超越した、ただ愛だけが息づく世界に結ばれる願いを歌っているのである。

このように深く純粋な愛の世界を、これまたシンプルに歌い上げた作品といえば、ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』、この一作に尽きる。
愛(エロス)と死(タナトス)の極みを描いたこの大作もまた、内側に深く深く沈み込むような愛の真実を描いていた。
そこで歌われるのは、愛を突き詰めれば死に至る、恋人たちの純粋な希求である。
『Cherish The Day』が、「天国に行けなくてもかまわない」と表したように、『トリスタンとイゾルデ』では、「この世を超えて、一つに結ばれる」と愛の究極を歌っている。
そこには、神的なまでに高められた、愛の世界が広がっているのである。

人の世の恋には、とかく、醜いものが付き物である。
恐れ、不安、嫉妬、打算……。
ただ、相手を愛する為だけに存在する愛というものが、どれほどあるだろうか。
その悦びを知る機会も、もちろんのこと。

そうした愛に巡り会えた人間は、本当に幸せである。
そして、その幸せに巡り会えた時、この曲を聴くと、SADEの歌っていることの意味が自身と完全に一体化して感じられるのである。

この日本語訳は、ちと納得行かない部分もあります。
「言うなり」とか「支配されている」とか。
つまりは「あなた」が世界の全てだ――ということを表現したいのですけど。。
ruleとかyou take my air のニュアンスを日本語に置き換えるのは難しいですね。

Cherish The Day ・・

こちらが私の人生を変えた一曲。
何度聴いてもその世界観に陶然とせずにいない。

この曲に出会えたのは幸せだった。
心の底からしみじみと感じる。

ビデオクリップも素敵ですが、ダンディなスーツ姿で歌うサンディエゴのライブも非常に魅力的。
冒頭のギターソロで昇天確実。スタジオ録音とはまた違った演奏が味わえます。

Cherish The Day (Live from San Diego)

以下、私のおすすめ。

Feel no Pain

ちょっとダークな色調とビートの利いたサウンドが都会的な異色の作品。
SADEのシャープな一面を感じさせる曲です。

Kiss of Life

恋人達のときめくような瞬間を謳った甘く優しいサウンド。
恍惚とさせてくれます。

『Cherish The Day』の他、ロバート・レッドフォード&デミ・ムーア主演の映画『幸福の条件』の主題歌『No ordinary love』、官能的な『kiss of life』など、いずれも愛の深い悦びを歌ったナンバーが9曲収められています。崇高な薫り漂う、お薦めの一枚です。

シャーデーというアーティストを考える時、この8年(love deluxeの前作『stronger than pride』から実に8年後の新作だった)、いつもそうした受け手との間の危うい時間のハードルのようなものを思い起こさずにはいられなかった。
つまり、ある意味で、これほどポップ・ミュージックのシーンの流れやファンへの代謝、さらには世の動向全般を無視して、自分たちの世界へ入り込んでいるアーティストも珍しいと思わざるを得なかったのである。

アルバムを形成する新曲のほとんどは、これ以上ないというほど言葉を切りつめ、無駄な装飾を削ぎ落とした詞で、シャーデー・アデュの個人的心象がうたわれていくようだ。

アルバムの音に接すると、通常いわれているエロスの意味を、根底からくつがえしてしまうような風景を見せつけられ、日常的常識的エロスからかけ離れた世界へ導かれるようだ。

『love deluxe』という桃源郷とも魔界とも判別できぬ世界を知る人は、まだまだ少ない、いや、ひょっとして、このアルバムを聴くまで、シャーデーのメンバー以外誰ひとり知らない精神世界かもしれないのだから。

(’92年9月21日) 大友良則 ライナーノーツより

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Cherish the Day の思い出

1999年発行のメールマガジン【Clair de Lune】の創刊号より

こんなメルマガが生まれたのは
毎日がいとおしかったから

Man has to pick up the use of his functions as
he goes along ―― especially the function of Love.
From ” A Room with a View” by E.M.Forster

『人生では、さまざまな能力を使ってみて、
その使い方を覚えていくしかない――
とくに、愛する能力の場合は』

“眺めのいい部屋”から E.M フォースター

ここでは「能力」と訳されていますが、【function】には、機能・作用・職務といった意味合いがあります。

上記においては、『心のはたらき』とも訳せるかもしれません。
人は様々な「体験=心のはたらき」を通じて、精神的に成長し、人間として完成されてゆくものですが、この世におけるもっとも難しい「心のはたらき」とは、人を「愛する」ことだと思います。

人は簡単に「愛」という言葉を使いますが、真実、「愛する」ことを知っている人――もしくは誰かを「愛している」魂は、希なのではないでしょうか。なぜなら、「愛する」ということは、絶え間ない努力であり、孤独や苦しみを恐れぬ勇気であり、見返りを求めず、相手にひたすら捧げ尽くすものだからです。

人が人を「好きになる」ことは、自然な心の作用だし、「恋に落ちる」のも割合簡単だけど、「理解する」となれば、相当な努力を要します。

まして「愛する」となれば――「愛し続ける」ともなれば――要する心のエネルギーも莫大です。

人は、自分自身については、いくらでも心を注ぐことができますが、他人にはそうそう尽くせるものではないからです。

人が、自分とは異なるもう一つの存在を、何の見返りもなしに、受け止め、理解し、慈しむことは、人間として最も尊い能力だといえるでしょう。

*

『Cherish The Day』は、私の大好きなアーティストSADE(シャーデー)の四作目のアルバム「Love deluxe」に収めらている歌の題名です。
崇高な薫り漂う旋律もさることながら、深い愛の悦びを謳った歌詞も最高。

特に、

If your were mine
もしあなたが私のものなら

if your were mine
私のものだとしたら

I wouldn’t want to go to heaven
私は天国に行けなくてもかまわない

I cherish the day
毎日がいとおしいの

I won’t go astray
もう道に迷うこともない

I won’t be afraid
恐れる事もない

you show me how deep love can be
愛がいかに深いものかあなたに教えてもらったわ

というくだりが好きで、”Cherish(チェリッシュ)”という言葉の響きに、とても甘美な哀愁を感じるのです。

心が悦びに包まれたなら、見るもの触れるものすべてが美しく、世界が輝いてみえるもの。

弾けんばかりの歓喜の中に、毎日を迎えるもの。

そういう悦びは愛の中にこそあり、恋する心がその扉を開きます。

私の【Cherish The Day】は、日常の些細な出来事から始まりました。

それは、本当に思いがけない恋であり、発見であり、悦びでした。

まさに「Cupidの悪戯」と呼ぶにふさわしい、切なくも素晴らしい体験だったのです。

それはまた残酷な現実であり、夜より深い苦しみの始まりでもありました。

それでも愛する悦びは、どんな悲しみや苦しみにも勝り、いつまでも深く心に残るのです。

Cherish The Day――毎日がいとおしい。

あふれんばかりの想いとともに書き綴ったのが、 『Clair de Lune』。

これは私にとって、まぎれもなくRoman d’amour『恋愛小説』なのです。

『To be born into this earth is to be born into
uncongenial surroundings, hence to be born a romance.』

この世に生まれることは、居心地の悪い世界に生まれることだ。
だからこそロマンスも生まれる。

G.K.チェスタトン

メールマガジン Vol.1から

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アルバム紹介

SADEの音楽活動において最高傑作といえるアルバム。
すべてが上質、かつロマンチシズムにあふれ、あまたのジャズヴォーカルでも、ここまで耽美な雰囲気を醸し出しているアルバムは無いと思う。
このアルバムに収録されている『Cherish the Day』 がオリジナル。
次に紹介している、『ザ・ベスト・オブ・シャーデー』に収録されているロングバージョンより短いが、余計な装飾がない分、沈潜度はこちらの方が深い。ぜひ両曲、聞き比べて欲しい。

こちらに収録されている『Cherish The Day』はオリジナルより更に1分ほど長いロング・バージョンになっています。
他にもSADEの世界的なヒットが多数収録されており、初めての方にはお薦めの1枚。
最近ではUltimate Collectionも出ていますが、やはりシャーデーのベストといえば80年代に連発した「スムース・オペレーター」「プロミス」「ラブ・イズ・ストロンガー・ザン・プライド」「ラブ・デラックス」の四枚でしょう。(Ultimateはその後の「Lovers Rock」の曲も含む)
『Please Send Me Someone To Love』というアルバム未収録曲が入ってるのもポイントが高いです。(下記にビデオをUPしてます)
私ならこちらをオススメします。

現在は入手困難となっている、『Cherish The Day』のリミックス・ヴァージョン。
これを倒産寸前の、しけたCDショップで見つけた時は涙が出るほど嬉しかった。
オリジナル、ロング・ヴァージョン、そしてリミックスと4曲が収録されているミニ・アルバム。
Cherishの世界が堪能できます。

これも最近のヒット曲まで収めて、サービスとしては良好だと思いますが、やはり本当の意味での「シャーデー・ベスト」は最初にあげた初期4枚のベスト盤でしょう。
「手っ取り早くシャーデーの世界を楽しむ」なら、やはり先の「ザ・ベスト・オブ・シャーデー」ですよ。

SADE love deluxe ライナーノーツ

SADE love deluxe ライナーノーツ

最終更新日: 2018年5月10日 初回公開日:2010.04.30

海洋小説『曙光』MORGENROOD

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