2018/07/15 改訂版 「『あなたの悩み、分かるわ』詐欺に気を付けろ」「周りの人をカウンセラーにしない」「人生なんて相談しても仕方がないことが多い」

『賃労働と資本』 自身の立場と権利を理解する 人と思想『マルクス』

『賃労働と資本』 自身の立場と権利を理解する 人と思想『マルクス』
この記事は前回の続きです
疎外された労働『経済学・哲学手稿』の誕生 人と思想『マルクス』

※ Googleドキュメントに全体の下書きを掲載しています。こちらの方が見やすいかも。
『人と思想 マルクス』 人は労働を通して社会的存在になる

『賃労働と資本』 自身の立場と権利を理解する

マルクスの真に偉大な点は、労働者の辛い、苦しいを、社会科学的に分析し、論理的に解決しようとしたことである。
なぜ、これほど心が苦しいのか、働いても働いても生活が楽にならないのか、それを資本主義的な生産システムから読み解いて、どこを、どう変えれば改善するのか、具体案を提示した。それが大多数の労働者の自尊心や権利意識や自尊心に火を付けたから、世界的な潮流となりえたのであって、もし、マルクスが机上の論議を繰り返すだけで、「ムカつく、許せん」で終わっていたら、こうはならなかっただろう。

1818年に生を受け、欧州の近代化と工業化を目の当たりにし、「なんか、おかしい」「どうにか救えないものか」という思いから、門外だった経済学を猛勉強し、世界の処方箋を編み出そうとしたマルクスの努力は、1849年、『賃労働と資本』に結実する。31歳。現代なら、まだ”若者”と呼ばれる年齢だ。

ここでは五つのパートに分けて賃労働と資本の本質が語られている。

1. 労働力の販売、賃金
2. 労働力商品の価格(賃金額)
3. 資本とは何か
4. 労働者階級の相対的な貧困化
5. 労働者の絶対的な貧困化

1. 賃金とは何か

賃金とは何か? と改めて問われて、即答できる人も少ないのではないか。

みな給料の額には敏感だが、それがどうやって、どのように決められるか、仕組みまで深く考える機会もないと思う。
「新入社員なら、こんなもの」「この業界なら、こんなもの」
その程度の認識ではないだろうか。

そこで、一度、考えてみよう。
自分の給料は、誰が、どのように決めているのか。
みな「それくらい」というけれど、本当に妥当か。
会社の収支はどうやったら分かるのか。
労働者にもそれを知る権利はあるのだろうか。

等々。

冒頭にも書いた「すべてを疑え」とは、そういう意味である。

2. 労働力商品の価格(賃金額)

”労働力”という商品の価格=賃金額は、何によって決められるか、考えたことがあるだろうか。
ファミリーレストランのウェイトレスの時給、日雇い作業員の日給、新卒サラリーマンの月給、まさか「法律でそう決まっているから」なんて思ってないよね?
たとえば、ファミリーレストランのランチタイム(12時~14時)には、毎日、100食のエビフライ定食(1000円)が売れるとする。単純計算すれば、2時間あたりの売り上げは10万円だ。そこから材料費や光熱費などを差し引いた分がレストランの利益になるわけだが、100食のエビフライ定食を売り上げる為に、時給1000円の調理師1人、ウェイトレス2人が、2時間、働くとしたら、人件費は6千円。さて、この6000円は妥当かどうか、という話だ。
当面、何の問題もなくても、近所にライバル店が誕生して、エビフライ定食を800円で売り始めたら、当然、レストランは競争面で不利になるし、レストランの売り上げが落ちれば、時給も影響を受ける。もっと競争が激しくなれば、「時給1000円は高すぎる。800円ぐらいでいい」という話にもなるだろう。業務内容やサービスの質は全く変わらなくても、調理師やウェイトレスの賃金=労働の価値は、状況に応じて変動するわけだ。

何を当たり前のこと……と思うだろう。

だが、冷静に考えれば、仕事の内容はまったく変わらないのに、1000円の時もあれば、800円の時もある。それって、おかしいんじゃない? 誰が労働の価値を決めるわけ? というのが、ここでの問いかけだ。

有名ファストフードの店員も、日本の時給と経済中進国の時給は全く違う。
業務内容もハンバーガーの値段もほとんど変わらないのに、どうして二倍も差がつくの?

そういう問題意識を持つことが、自らの立ち位置を理解し、現状の改善に繋がる

すべてを疑え。検証せよ。

本当にそれが正常なのか。何かおかしくないか、と。

3. 資本とは何か

日本も資本主義社会だが、何をもって「資本」というのか、考えたことがあるだろうか。
社長=資本家ではないし、年収1億ー資本家でもない。
逆に、小さなラーメン屋の店主でも、自分の土地と店舗を有して商いをしているなら「生産手段を有する者」であるし、まったく働かなくてもアパートの家賃収入で余裕で暮らせるなら、絶対的に賃労働が必要なサラリーマンとは立場が異なる。

ちなみに、小牧氏の著書には、次のような解説がある。

資本を有する資本家は、資本の一部である生活資料をもって、労働者の労働力を買い入れる。(手続きとしては、資本家は賃金をあたえて労働力を買い、労働者は、その賃金で生活費を手に入れる)

資本は賃金労働がなくては生存できない。資本は労働力を買い入れ、労働力を搾取しなくては破滅する。逆に労働者は、資本がやとってくれなければ破滅してしまう。

だから、資本と賃労働、資本家と賃労働者という生産関係があってはじめて、資本は資本として、労働者は労働者として、みずからを存続させることができる。

賃労働者が賃労働者であるかぎりは、かれの運命は、永久に資本に依存し、資本に隷従している。資本は、労働者を被支配・隷従の状態におく生産関係ないし階級関係をあらわしている。

この構造は今も変わらない。

仕事を辞めても生きていける人間が、この世にどれくらい存在するだろうか。

4. 労働者階級の相対的な貧困化 & 5. 労働者の絶対的な貧困化

このあたりも、ビジネスの仕組みや就労のスタイルがどんどん変わってきているので、マルクスの時代の考え方をそっくり適用することはできないが、「分業や機械の進展は、大量の労働者から職をうばい、かれらを失業者にさせてしまう。逆に、賃金の安い婦人や子供を家庭から工場へ引っ張りだす」という分析は将来も変わらないかもしれない。現代は、AI失業が言われているが、生産様式が変われば、新たな問題が生じるだけで、永久的な解決にはならないと思う。

書籍案内

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 著者  小牧 治
 定価  ¥ 1,080
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 5つ星のうち 4.3 (6 件のカスタマーレビュー)

大正生まれの文学博士・小牧治氏による、思い入れたっぷりのマルクス入門編。
ごりごりと思想を押しつけるのではなく、なぜ共産主義が生まれるに至ったかを分かりやすく解説。
19世紀の実状や欧州の思潮の把握にも役立ちます。Kindle版もあり。

 賃労働と資本 (岩波文庫) (文庫)
 著者  カール マルクス
 定価  ¥ 562
 中古 41点 & 新品  ¥ 1 から
 5つ星のうち 4.2 (13 件のカスタマーレビュー)

労賃とは何か,それはいかにして決定されるか,という身近な問題から出発して価値法則を簡潔に説明し,剰余価値の成立を明らかにする.マルクスがこれを『新ライン新聞』に連載してから百数十年,資本制的搾取の仕組を暴露したこのパンフレットは世界各国の労働者に広く読みつがれて来た.『資本論』研究のための最良の手引書.

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  • 初回公開日:2018.06.07

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