2018/07/15 改訂版 「『あなたの悩み、分かるわ』詐欺に気を付けろ」「周りの人をカウンセラーにしない」「人生なんて相談しても仕方がないことが多い」

若い人は現代史を勉強した方がいい

若い人は現代史を勉強した方がいい

歴史の勉強といえば、鎌倉幕府とか、足利尊氏とか、年代や人名を暗記するのに多くの時間を割くと思うが、若い人は近代史と現代史、とりわけ戦後から21世紀にかけての流れをじっくり勉強することをおすすめする。なぜ、こんな世の中になったのか、よく分かるから。

現在、深刻化した問題の大半は70年代に芽が現れ、80年代に加速し、90年代で露呈した印象がある。
世紀末から2000年初頭にかけて、やり直すチャンスもあったが、構造改革や、派遣法改正などで、日本の産業にトドメを刺した。
世界不況だ、グローバル化の弊害だ、等々、いろいろ理由をこじつけて、諸悪の根源から目を反らそうとする動きもあるが、何が悪かったかは、バブル世代から高齢者世代が一番よく知っているだろう。そして、その声がほとんど聞かれず、利口な人ほど口をつぐんで語らないのは、賢明でもあるし、国家的な損失とも思う。

今もいろんな論説が溢れかえっているが、70年代から90年代にかけての流れを理解せず、現在だけを切り取って「こうだ」と決めつけている意見も少なくない。80年代や90年代がどうだったか、実際に体験してないから、そこらで聞きかじった話を繋ぎ合わせて推測するしかないのだろうが、それなら余計で、現代史に興味をもって頂きたいところだ。

私が思い返しても、80年代や90年代は異様だった。バブル経済で、のりにのってはいたが、確実に問題の根は広がりつつあった。政治経済は言うに及ばず、教育も、医療福祉も、文化も、目先の利益を追いかけるばかりで、百年の計など考えもしない。この勢いが永遠に続くかのような錯覚の中で、手当たり次第に畑を掘り返し、大事な基盤を根絶やしにしたような印象だ。とりわけ教育は80年代には既に失敗していたし(偏差値重視で、討論、分析、思考といった訓練が十分になされず、法律や政治について学ぶ機会もない)、医療福祉も高齢化や社会保障費の増大について数々の提言がなされていたにもかかわらず完全無視。この時、手を打っていたら、今頃まったく違った展開があっただろうに、聞く耳持たずは百年の計も持たないのだ。

様々な社会問題を前に、若い論壇が育つのは頼もしいが、みずみずしいのは感性だけで、切実さに欠け、掛け声だけで終わっている感がなきにしもあらずだ。年長者を揶揄する声もあるけれど、二十年、三十年の長いスパンで社会の移り変わりを俯瞰できる点では、中高年者の方が一日の長があるし、最先端の情報を持つ者が必ずしも正しい解決策を導き出せるわけでもない。見た目の新しさだけで実際以上の評価を与えるなら、金目のものに飛びつくバブル時代と何ら変わりなく、自分たちは決して過たないと誰が言い切れるだろうか。

社会問題は癌と同じだ。

癌細胞が肥大し、呼吸困難や胃痛といった症状を引き起こす頃には手遅れになるケースが多い。

でも、その萌芽は、十年二十年にわたるタバコの吸いすぎとか、ファストフードの食べ過ぎとか、ごくごく初期の段階に現れており、注意された時点に改めていれば、かなりの確率で予防はできる。

今表面化した問題も、その萌芽は数十年前からばらまかれているわけで、その経緯を俯瞰するには現代史に対する理解は不可欠だ。問題の枝葉の元をたどることで分析も深まるし、分析が正しければ、有効な解決策を導きだすことができる。正しい検査結果が適切な治療に繋がるように。

私としては、古代史を勉強するのと同じくらい、現代史についても学ぶべきと思うのだが、時間数の不足や教師の負担などから、今後も学校のカリキュラムに積極的に取り入れられることはないだろう。

しかし、本当に現在起きている問題を理解したいなら、鎌倉幕府より自民党、足利尊氏より歴代総裁、当時のメディアを賑わせた数々の社会事件に目を向けて頂きたいと思う。

彼らが過去に為したことが、現在を形作っているのだから。

(野党や官僚の影響も大きいが、実質、国の舵取りをしてきたのはこの筋なので)

最終更新日: 2018年2月22日 初回公開日:2018.01.30

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