2018/07/15 改訂版 「『あなたの悩み、分かるわ』詐欺に気を付けろ」「周りの人をカウンセラーにしない」「人生なんて相談しても仕方がないことが多い」

歴史を信じないものは歴史に復讐される

歴史を信じないものは歴史に復讐される

歴史を信じない者は歴史に復讐される。
ところが歴史だけしか信じない者は孤独になる。
灰男
そんなこと位わかっているよ。
いやいや、わかっているとは思えない。言ってみれば君らのしてることは歴史とは無関係なんだ。

<中略>

きみたちのその子供っぽい、思いつきの行動にしてみても個人的な非合理主義の侵略性ということで説明がついてしまう。結局スポーツですよ……それも町の真ん中でアメリカンフットボールをやるようなもんだ。

戯曲 毛皮のマリー・血は立ったまま眠っている (角川文庫)

歴史というのは難しい。家族史でさえ、誰が言ったの、言わないので、口論になる。

妻 「あの時、福岡に移住しようと言ったのはアナタじゃないの」
夫 「オレはそんな事は言ってない」
妻 「いいえ、言いました。西区のマンションのパンフレットをもって来て、こういう所に住まないか、と勧めたのはアナタですよ」
夫 「オレは”こういう所がいいな”と言っただけで、引っ越すとまでは言ってない。引っ越しを決めたのはオマエじゃないか」
妻 「そりゃあ、決めたのはアタシですけど、最初に何所にするか相談した時点で、あなたが西区を押したから、そうなのかと思ったんじゃないですか」
夫 「そんなものはオマエの思い込みだ」
妻 「じゃあ、どうして西区がいいな、など言ったんですか」
夫 「いいなと思ったから、いいなと言ったんだ」
妻 「じゃあ、あなたにも責任の一端はあるでしょう」

あとはエンドレス。

まして国家間のイザコザなら、いわずもがな。

誰がやったの、彼がやったの、自国に都合のいいように記録を編纂し、他国より有利に運ぼうとうのは、いずこも同じだろう。

しかし、どのように語り継ごうと、史実というのは厳然と存在するわけで、爆弾が勝手に歩いて爆発するわけでもなければ、鉄砲がひとりでに相手国の将校だけ狙い撃ちするわけでもない。そこには必ず、計画した人間があり、指示した人間があり、実行した人間が存在するわけで、その事実を明白にするのが『歴史』であり、是非を問うのは『解釈』だと思うのだ。

歴史に忠実に……というのは、「爆弾を落としたから、○○国が絶対に悪で、永久に許すまじ」という話ではなく、そこに至るまでの経緯を多角的に分析し、未来に活かすことだ。感情的に断罪するのはジャッジであって、歴史にのぞむ態度ではない。このあたりを履き違えると、真の意味での歴史的考察はストップしてしまうし、どちらかを断罪したところで、双方にとって良き教訓になることはないだろう。

『歴史を信じない者』とは、自分に都合が悪いからと、あったことを無かったことにしたり、誇張したり、削減したり、一方的にストーリーを書き換えてしまうことをいう。それは一時期、物事を有利に運ぶかもしれないが、事実は事実として永久に変わらないのだから、いつかは自分自身が書き換えられ、糾弾されることになる。歴史に裏切られるというのは、そういう意味だ。真実は決して黙ってないのである。

一方、既存の歴史に拘る者は、検証しようとする世の動きの中で孤立する。大多数が見直しを迫る中、何が何でも黒と言い張る者が、どうして共感を得られるだろう。

歴史と向かい合うには、謙虚さと客観性が何よりも大事、という喩え。

『きみたちのその子供っぽい、思いつきの行動』というのは、革命を起こそうと、自衛隊の兵舎の壁に『自由』と書いたり、部品を盗んだりしている良と灰男のこと。

灰男:おれにできたことは表札やラッパを盗んできて、それに唾をかけ、蹴飛ばすことだったんだ。おれはどんな小さな、たとえ空き缶ぐらいの栄光でさえゆめみたりはしなかった。

盗んだり、壊したり、叫んだり、揶揄したり。彼らは何かしているような気がするだけで、ちっとも社会の方に向いてない。そんなものは往来のお祭り騒ぎと同じで、何をも変えることはない。では、彼らはどうすべきなのか。真に改革すべきは、兵舎の壁や制度ではなく、人間の意識の方だ。まず内面が変わり、ついで外面に現れる。それは非常に遠回りかもしれないが、確実に物事を変えていく。一部の企業では育休や定時帰宅が推奨されているように。

歴史に影響するには時間がかかる。五年、十年、時に、百年、二百年。

歴史は私たちを失望させることもあるが、正しいものには報いる部分もある。

短絡的な革命家が頓挫するのは、物事を急ぎすぎるあまり、表面だけ壊して、何かを成した気分になるからだろう。

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最終更新日: 2018年2月12日 初回公開日:2018.01.22

海洋小説『曙光』MORGENROOD

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